「これが本当のタンスにゴン?」サックスブルーの奇跡(その1)

世界初のJリーグマスコットキャラが主役のSF小説です。

■第一章/ふろん太のたくらみ
あれは、たしか13日の金曜日の仏滅の真夜中の12時だった…。2日前のジュビロ戦で、4-0とボロ負けしたフロンターレのマスコット、ふろん太は、ひそかにリベンジを狙っていた。
夜、こっそりとすみかの神奈川県川崎市の等々力競技場から抜けだし、自転車に飛び乗ったふろん太は、猛スピードでペダルをこぎ続け、たったの30分で静岡県の磐田市に到着してしまった。約150キロの距離を30分ということは、時速300キロである。新幹線のぞみよりも速い!!それほどまでに、ふろん太の復讐心は熱く熱く燃えているのである。
ふろん太は、元々はイルカがモチーフで水棲動物なのだが、コスチュームはいかつく、まるで少年マンガに出てくるバーチャル戦士のようである。そのせいか、ふろん太は、なぜか陸上でもパワフルで、戦闘的である。
磐田駅前には、ジュビロ磐田のマスコット、ジュビロ人形がそそり立っていた。静岡の県鳥・三光鳥のジュビロ君をモチーフにしたキャラクターで、かわいくてお調子者の雰囲気が、磐田市民ばかりでなく、全国から幅広いファンを集めている。駅前のジュビロ人形を見てしまったふろん太は、その雄姿と人気ぶりに腰を抜かし、川崎での自分の立場のあまりの低さにジェラシーを感じ、さらに闘争心をかき立てたのだった。
深夜の磐田市内を駆けめぐったふろん太は、ジュビロ磐田の選手宿舎となっているマンションを捜し当てた。そして、いきなり、ゴンこと中山隊長の部屋にはいりこみ、この日本を代表する人気者のエースストライカーを、サッカー界から葬り去ることを考えた。
ふろん太が自らの手で、なき者にする…と思いきや、部屋の大型タンスに彼を閉じ込めてしまった!コマーシャルのフレーズそのままの「タンスにゴン」となってしまったのである。「明日、とっくりと思いしらせてやる…。」と言いながら。なんと、ふろん太は、そのタンスをリモコン操作で高速移動できるように改造したのである。ゴン中山隊長を閉じ込めたタンスは、ふろん太の思いのままに操られることになったのだ。

■第二章/タンスにゴン中山隊長
翌朝、タンスに閉じ込められたゴンは、寝ぼけまなこのまま「変だなー、朝起きたばかりなのに…。おれの人生真っ暗だ」と、ぶつくさつぶやいていた。立ち上がって背もたれに体重をかけた瞬間!がたんと後ろに倒れ、急に加速するのを感じた。かたかた動いている様子を身に受けて「いいマッサージ機だ。疲れがとれる」と言いながら、のんきにまた寝てしまった。
それを見ていたふろん太は、「なんてノー天気なヤローだ」とあきれながらも、タンスの操縦を続けた。ちょうどそのとき、磐田駅前にいたジュビロ君は見覚えのあるタンスがよこぎるのを目撃した。しかも、そのタンスから、ひらひらと青いものが見えるではないか。それをよく見たらジュビロのサックスブルーのユニホームで、しかもゴンの背番号9じゃん!!「あっ隊長!!!!なぜタンスに!?」と叫びながら、ジュビロ君は必死になってタンスを追いかけていった。
一方、宿舎では大ちゃん(奥大介選手)は、人生についての相談をしようと、ゴン中山隊長の部屋にはいった。「中山隊長、おはよーございま〜しゅ。」だが、その部屋には、隊長どころか、タンスもないのだ。これをみた大ちゃんは、「あぁぁぁぁ!!!!中山しゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!どこへ消えてしまったのぉぉ〜〜!」と、絶叫した。その声でチームメイトのみんなも飛び起き、どやどやと部屋に集まってきた。状況を知ったみんなは、「中山さんがいないと試合に勝てないどころか、スタジアムまで道のりわからんずらー、どーしよまいか?」と、途方にくれてしまったのだった。

■第三章/天竜川のハプニング
タンスを追いかけていたジュビロ君は、天竜川のところでようやく追いついた。タンスは川に落ちる寸前だった。ジュビロ君は強力なくちばしをつっこんで、この暴走タンスを必死になって止めるのに成功した。そして全身の力をふりしぼり岸に上げた。しかし、タンスからくちばしがとれない。
その直後!「あああああああーーーーーーーーー!!痛いーーーイテテテテーーーー!!」と中から特徴のあるかんだかい、3キロ先まで届くような大声が爆発した。そのあまりの声のデカさに鍵がこわれ、タンスが開いた。ショックのおかげでくちばしが抜けたジュビロ君は、心配そうに中をのぞいた。中には、痛い痛いと、苦しみもがくゴンがいた。
その頭にはなんと直径5センチの穴が、ぽっかりとあいていていた。どうやらタンスに穴を開ける時に、ゴンの頭までつきさしてしまったようだ。
悲惨なゴンだが、そのおかげで、ふだんから高かった血圧が平常に戻ったようだ。これで試合は冷静に進められると思うが、頭の穴をふさがないとヘディングができないので、近くに落ちていたコルク栓をつっこんだ。そのコルク栓はふろん太が昨晩ヤケ酒でのんだワインのだった。とりあえずゴン隊長の無事をみて胸をなで下ろしたジュビロ君は、「おい、ゴン大丈夫か?おみゃーがいないと試合に勝てんずらー。」と、呼びかけた。まだ、意識がはっきりしたとはいえないはずだが、「あぁ、頭がすっきりした。」と、目覚めたゴンは大きく背伸びした。
そのときである。東海道線の天竜川鉄橋を渡った列車が、こっちへばく進して来た。ビューーーーーーーーーーーーーーン。列車が通りすぎたと思ったら、なんとタンスごとゴンがいなくなっていたのだ!!「あれ?ゴン、どこへいったんや?」振り返った瞬間!ジュビロ君は通りすぎてく列車の屋根の上に、なんと、ゴン中山隊長とタンスが載っているのを目撃したのである。「あ〜っ!そこの列車待て〜〜!!」ジュビロ君は、恐ろしいスピードで列車を追いかけた。しかし、とても追いつけない!「ふふふっ」列車の上から不気味な笑い声が響いた。そこには、リモコンを持ったふろん太がいた。「まて、人型イルカ!!!!!!!!!!!!、だれか力を貸して〜!」と、ジュビロ君は叫んだ。すると!なんと、中日ドラゴンズのマスコットのシャオロン(手のないバージョン)が突然わいてきた。竜の超能力でジュビロ君をポーンと列車の上に放り上げ、「がんばれ!」と書いた旗をくわえてエールを送ったのだった。ジュビロ君は「ありがとなー!」と、お礼を言いながら、列車の最後尾から、ゴンの救出に向かった。

■第四章/列車の上の決闘
ゴーーー。列車は名古屋へばく進中である。なさけないことに、ゴン中山隊長は、タンスに閉じ込められたまま、ふろん太に絶対零度の息(マイナス273.15度C)をふきかけられようとしていた。あらゆるものが凍ってしまう恐るべきフロン冷気である。ゴン、危うし!!。ぎゃー!。悲鳴が響いた…。
間一髪である。後ろからジュビロ君がふろん太の頭をつついたのだ。「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 何すんだ、このキツツキ野郎!」その言葉に、かちんときたジュビロ君は、「おみゃーの方こそなんてヒドいことするんや!ワイはキツツキやない、三光鳥や!!」と、言い返した。ふろん太も負けじと、「こっちは哺乳類だ!おみゃーは鳥類だ!脳みそないくせに!!馬鹿!アホ!」、「エラソーなこというな!人型イルカ!!そのファッション、見苦しいぞ!!」もう、たがいの悪口合戦である。
両者がののしりあっているうちに列車は愛知県に入り、名古屋の新名所である三連橋・名港トリトンにさしかかった。「あーーーーーーー、頭が痛いーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」全世界を揺るがすくらいの大声が響きわたった。ゴンの頭のコルク栓のアルコールが効いてきたようだ。大絶叫のせいで、ドドドドド・・・・・・なんと橋がこわれ、列車はタンスごと名古屋港に落ちてしまった。白い波紋に、サックスブルーのユニホームも、のみこまれてしまった。ひさんな事故である。

■第五章/朝の全国ニュース
そのころ、磐田では、ジュビロのチームメイトが「どこ探しても、中山さんいない…。」と、あきらめかけて、テレビの電源を入れた。ちょうど、《ズームイン!朝!》をやっていた。画面の福沢アナが、「ところで、ドラゴンズはどうなったかな?恵美ちゃん?」と呼びかけ、「はーい、ドラゴンズ勝ちましたー!」と、名古屋の恵美ちゃんが答えた。そのときだった。画面のバックに名古屋港名物のシャチホコ型観光船・金鯱号が入港してきたのが映った。そして、金鯱号の後ろには、なんと、タンスがひっかかっていたのだ!!それは、どうみたって、ゴンのタンスではないか!!!これには、全国の視聴者も目をみはった。
同じころ、ジュビロ君も近くの岸壁に打ち上げられた。二人はすぐ気づき「生きててよかった…」と、たがいに手を取り合って喜び合った。その横には、ふろん太のタンスリモコンも落ちていた。二人はタンスに乗り込み、磐田へ超スピードで帰っていった。

■第六章/エピローグ
磐田市では、テレビで事情を知った市民が総出で、ゴン中山隊長とジュビロ君の無事を祝福してくれた。二人は、タンスに乗ったまま、駅前のジュビロードをパレードした。紙吹雪が舞い、応援旗がはためき、大歓声に応える二人は、まるで優勝したような得意げな表情で、これからのますますの活躍を誓ったのだった。
その次の日から、各地には「タンスにゴンを入れないでください。」という注意書きの看板が見られるようになった。磐田の人は口々に「タンスに隊長いれちゃだめだよね。」と言うようになった。だが、首都圏では「タンスにゴンの防虫剤いれちゃだめなのか?」と信じるようになり、タンスにゴンの商品の売り上げは急降下してしまったという。
一方、ふろん太は、はるか地球の裏側・南フランスの避暑地にまで流された。帰国費用を稼ぐため、フランス代表チームのエース、ジタンの別荘でアルバイトをしていた。甘く切ないメロディを口ずさみながら、ふろん太はふたたび復讐をねらっていた。「ああ…太陽がいっぱいだ。」まるでアランドロン気分である。しかし、そのころ、ふるさとの川崎フロンターレは、J2落ちしてしまっていたのだった。もうジュビロとは対戦できない…。

Copyright 2000.8.26 脇田ひろな

その2(アントンの野望)


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