司馬専太郎エッセイ7
ドクターの夏休み(ボランティア編その2)■移植者テニス競技
さて,第13回世界移植者スポーツ大会テニス競技も今やたけなわ。
立秋を過ぎたとはいえ,まだ8月。日差がどんどん強くなり,気温も30度を越えました。オランダの65才の選手が競技中に脱水症をおこしかけ,場内アナウンス。「ドクター,ドクター至急本部まで連絡して下さい。」と,浅野さんのアナウンス。準決勝観戦中だった僕は,あわてて駆け付けると,コートの端で,頭から水をかぶり,今にも倒れんばかりのベテラン選手が,「私は,試合は負けても(ルーズ)いいが,生命だけはルーズしたくない。」と,息も絶え絶え。ドクターストップ10分間としました。本部のテントの中で横になって休んでもらいましたら,5分もたたないうちに,「アイアム,OK。」といってコートに戻って行きました。その後,彼は試合に勝ったそうです。
お弁当をとってから,一度ローンボール会場へ顔を出しました。芝生上のカーリングの様な感じで,ボーリングの少し小さなボールでターゲットに近く止まらせるゲームですが,この会場は,医療的に問題なしとのこと。
帰りに,アイスクリーム20個ほど買って,再び自転車でテニス会場へ。アナウンス嬢以下ボランティアの若い女性は,もちろん「わっ!,アイスクリームだ!」と,ドクターも御満悦。
午後の,スーパーベテラン決勝では,オーストラリアの元プロの選手とドイツの選手が,フルセットの熱戦。国別対抗のデビスカップを見ている様でした。
また,女子では,日本初の脳死患者さんから肝臓を提供された乾さん(京都)が,熱戦を勝ち抜いて優勝。さかんにマスコミから,インタビューをうけていましたが,嫌な顔ひとつせず丁寧に答えていたのが印象的でした。テレビ福島の報道部の丸山さんも,とても良い質問をしていたので,逆に聞いてみると,移植や,選手についての資料をいっぱい持っていて,前日に勉強したとか。マスコミも遠くから大変です。僕も,日本の移植がどうして,少ないのかを,さっきのオーストラリアのプロの選手に聞かれたので,「宗教上の問題と言うより,ボランティア精神の訓練が小さい時からなされている外国と日本の違いかな。」と答えておきました。臓器の提供をうけて,こんなに元気にスポーツに,そして仕事に活躍している選手を見ると,この機会に国民が移植にもっと,もっと,関心を持ってくれればと思うのは,関係者の一番の願いでもあります。
表彰式では,カナダのトロントから来たおひげをはやした3位になった男性の方とお話。「シングルスだけ参加しました。明日飛行機で帰ります。3位は一生の思いでです。」と僕に語ってくれました。