司馬専太郎エッセイ8
ドクターの夏休み(シアトル編その1)■シアトルの寿司屋さん
神戸の医療ボランティアから帰り,2〜3日診療してから,今度は,国際小児腎臓学会が開かれるシアトルに飛びました。
シアトルは,小生が留学のため家族5人で,1984年から1988年まで住んでいた街で,海と森と湖に囲まれた静かな街で,いわば我々家族の第2の故郷です。もちろん最近では,イチローもこの街の大リーグ・マリナーズで大活躍。
我が家の長男,健太郎もこの4月から,北シアトル大学に留学中にて,シアトルで学会があれば,行かぬ訳にはゆきません。もちろん9月3日のセーフコ球場での野球試合のチケットも長男を通じて予約してあります。3塁側,前から9列目です。旅行バッグの中には,ファールボールをキャッチするためのグローブを入れてあります。おっと,学会にはちゃんと出席して医者として最新の知識を仕入れる事も忘れてはいけません。
8月31日(金)に出発,同じ日の午前11時にシアトル・タコマ空港に到着。
日本からの同行は,大学院を卒業して,留学先を探している若手のドクターの鈴木君です。空港につくと,友人のボブさんが「Welcome Back!!」とお出迎え。3年ぶりの再会です。かれは,地元の中学校の教育指導主任でしたが今はリタイヤ。日本語に興味があって,日本人学校にアメリカ人として入学,そこでPTAの副会長をしていた私と知り合って以来,10年余のおつき合いです。
空港からは,レンタカーで真直ぐ,かつての僕がつとめていた研究室のある州立ワシントン大学を訪れ,近くのワシントン湖にたむろするカナダガチョウに挨拶。ここは,よくスケッチをした場所でもあるのです。(ドクターホームページ画廊参照)
大学の近くのホテルに荷物をおろし,さっそく長男と3人で,ダウンタウンのセカンドアベニューにある「シロー寿司」に行きました。シローさんは,昔のゴルフ仲間。寿司を握りながらのおいしい日本食の説明は,アメリカ人にも大人気です。大平洋に面したシアトルだけあってネタが新鮮で,特に脂の乗ったキングサーモン,ほっぺたがとろけるばかりのウニ,ダンジェナスクラブ(ザリガニの大きいの),グイダック(シアトル特産の貝柱)がおすすめ,もちろんマグロ(ブルーフィンツナ)も最高です。
さて,大満足して宿にかえって,一晩寝た後は,さっそく近くのグリーンレイクの周りをジョギング。9月のひんやりした空気はすでに秋そのもの。半周もすると,見えました4000mのレーニア山です。氷河があって一年中真っ白です。朝食を簡単にとった後,会場のウエスティンホテルにて登録をしました。
僕達が1番始めだったらしく係りの金髪の女性も愛嬌満点,日本からだと聞くと,さっそく,「イチロー!,サンキューベリーマッチ,とっても良い選手をもらってシアトル人達は,大喜びです。きっと日本では彼がいないので,さみしいでしょう。」というので,「いえ,決して。マリナーズの全部の試合を衛星放送でみられるので大丈夫。我々日本人も大変彼を誇りに感じてます。」と,鼻高々。チケット持ってますと言うと,「まあ,うらやましい。とても手に入れるのが難しいの。」もう一枚持っていれば誘えたのにと鈴木君としばし目配せ。午後からは,そのマリナーズの本拠地のセーフコ球場ツアーに出かけました。最初に見せていただいたのが,イチローも座った記者会見室。次に選手のロッカールーム。そして緑の芝もあざやかなグランドに降り立ちました。
感激です。そして,記者席から王貞治の名前もついたVIPルームに案内され,しばし休憩。外野席のてっぺんからは,フェリーが行き交うシアトルの港や,スペースニードル(展望レストラン)が,一望できます。もちろん帰りには,イチローグッズの買い物。
夕方には,懇親会にウエスティンホテルに。そこでは,なんと友人でワシントン大学の助教授になったマイクの高校生のひとり息子のブライアンのジャズバンドが演奏中でした。そういえば,マイクに朝電話をかけた時,ブライアンはダウンタウンで演奏のバイトとかいっていたのです。さっそく「枯れ葉」をリクエストしました。シアトル郊外のシャトーミッシェルの白ワインを片手に人並みを泳ぐと,居ました留学時代の,日本人の友達の三原先生です。かれは上司の山田教授御夫妻と,一緒にこのホテルにお泊まりです。三原先生も,僕が主宰するシアトル会(シアトル,ワシントン大学留学同窓会)の会員で,10年ぶりの訪問とか。僕と違って,研究室から一度も外へ出た事がないくらい超真面目な研究員で,かれのボスのキャロル教授の研究室で,もっぱらネズミの腎臓の,尿細管という細い管に,ガラスの電極を差し込んで,中の電解質の濃度を測定するといった,とてつもないく細かい仕事で,日本人しか出来ない業の名人でした。僕はというと,少し離れた生化学の実験室で,動脈硬化に関係する遺伝子を探していましたが,研究に飽くと,ちょくちょく彼の研究室の,研究助手のパムという山登りが大好きなおばさんのところに「だべり」に行き,ことに彼女は,秋になるとシアトル産マツタケをとってきて見せてくれたものです。マツタケが採取できる場所は極秘だそうです。
「ところで先生,御願いがあるのですが,じつは,われわれ,足がないものですから,明後日教授を大学まで連れていってもらえないでしょうか。」と三原先生。シアトル会の会長としては,シアトルに来るお客さんを案内するのが仕事ですので,「ああ,いいです一緒に行きましょう。」と返事。「実は,,,,」と「そのあと,夕方マリナーズの券を買ってあるので。球場まで送っていただけませんか。」と言うので,「よかった,われわれも券を持っているのです。御一緒に見に行きましょう。」と,さっそく,野球のお話になってしまいました。