司馬専太郎エッセイ9
ドクターの夏休み4 シアトル編その2
■小児病院
月曜日,学会は朝の7時から始まります。初日ですから,はりきって出かけました。しかし,午前11時を回る頃から猛烈に眠気が襲って来ました。横を見ると若手の鈴木先生も,「こっくり」やっています。幸い午後からは演題が外科系のものですので,思い切って外に出て,この学会の主催でもあるチルドレンズホスピタル(シアトル小児病院)を見学することにしました。僕の友人で,クロネコヤマトに勤務している寺川隆男さんの奥さんのナンシーさんが,小児病院の集中治療室で呼吸管理療法士として働いているので,アポイントをとって出かけました。ナンシーさんは,交換留学生として日本に勉強中に隆男さんと空手クラブで知り合い,結婚。シアトルにもどり,今では3人の子供さんも大きくなり,2人のお姉ちゃん達はそれぞれ就職。一番下の太陽君がシアトル大学に通っています。ナンシーさんは,家では日本男児の隆男さんに従い日本語しか話さないのとのことで,日本語がペラペラ。旦那さんはいつまでも英語が苦手。もっとも日本人相手の引っ越しの商売ですから,大丈夫とのことです。隆男さんは,以前,シアトルで空手の指導や,スキーのパトロール,山岳スキービデオ撮影,サーモンフィッシング案内などの商売をしていたのですが,たまたま僕が,留学を終えて日本への引っ越しを手伝ってくれたとき,ヤマトの事務所で,「なあ,寺川さんそろそろ定職についたら。」というと「僕もそう思っていました。子供も大学にやらなきゃいけないし。」といって,「じゃあ,ここに決めます。」と即座にクロネコに入社してかれこれ10年になります。
小児病院の救急部の入り口にて待ってると,ナンシーが出て来て,「やあ,お久しぶりですね。」と日本語で案内していただきました。同行の鈴木先生も,いままで英語ばかりで緊張していたので,少しほっとした様子。集中治療室に案内されると,10人ほど〇才から12才までのお子さんが治療を受けていました。全部個室です。親も一緒の部屋で寝泊まりしています。スタッフは,人工呼吸器点ばかりを扱うナンシーの様な理学療法士,高カロリー輸液注射などを血管注射する専門の人など,役割分担が細分化しています。お医者さんは,集中治療専門のレジデンスが2〜3名飛び回っていました。ナースもそれぞれの患者に1〜2名付いていて,人員的にもゆったりしているので,「採算は大丈夫なの。」と院長の様な口振りで尋ねると,「まあ,苦しいけど,いつも宣伝,宣伝ね。」とナンシー。壁に貼ってある病院の行事日程を見ると,病院見学ツアー,子供対象のフィールドツアー,無料医療相談,手品やコンサートのお知らせなど盛り沢山。アメリカの多くの病院が,市民や民間の直接の寄付で運営資金を得ているので,日本の病院とは違って一般市民への呼び掛けがさかんです。「シアトル市民達も,わたしたちの子供病院と思ってくれてます。」とナンシー。お土産に,日本の神戸泉屋のクッキーを渡すと,「まあ,日本人はいつも大変ね,私たちも来月,隆男の親が住む横浜に帰るので,いまからたくさん買い物しなくちゃ。」と,ナンシー,さすが日本の主婦でした。
さて,いよいよマリナーズ球場へ行く時間が近づいて来ました。