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裏日本紀行1
裏日本ギャルと接近遭遇の巻

長いワープトンネルを抜けると、そこは紛れもない裏日本だった。
僕が発見したワープ法はいつも大量の飲酒が必要で(詳しくは序章のワープ誘発因子の項参照)、一体どんな風にワープしたのか覚えていないのが最大の欠点だが、残念ながら、現在まで他の方法は見つかっていない。
しばらく物陰に潜んで酔いを醒まし(ウッ頭が痛い!)、曲がりくねった細道を歩いてゆくと、やがて一軒のインターネット・パブに行き着いた。そこではなんと、最新の裏日本ファッションを纏ったギャルたちがネットサーフィンを楽しんでいるではないか。
「しめしめ、この奇妙なファッションこそが裏日本を証明する生きた証」とほくそ笑みながら、さっそく接近遭遇を試みる。
「あのー、ちょっとお話を」
「あら、あっちのオジサン、元気してる?」
さすが敏感なギャルたちだ。一発で僕が表の人間であることがバレてしまった。
彼女たちに限らず、僕らを「あっちの人」と表現するのは、裏日本のごく一般の習慣だ。
「バレたんじゃ仕方がない。ちょっとインタビューしたいんだけど、
喫茶店でも行かない?おいしいいお団子の店があるんだ」
いくらナウくても、ギャルたちが食欲旺盛なのは世界の裏表を問わない。しばらくヒソヒソと談合のすえ「ゼッタイお団子食べるだけよ」と念を押してついて来た。
「おか」と書かれたノスタルジックフーズ・バーに入ると、ステージでは早くも念仏ダンスが始まっている。
「ところで君たち、表日本に行ったことある?」
「あーら、もちろんよ。だってワープタクシーに乗れば簡単だもの、ねえ」とサングラスの娘。
「25ガメシュ払えば、ガイドも雇えるのよ」と大人しい方の娘。どうもこの娘は僕に気があるらしく、さっきから目線を合わせて秋波を送ってくる。
裏日本人との間に出来た子は、いったいどんな人間になるんだろうか、なんて想像しながらニヤニヤしてると、突然意識がモウロウとしてきた。しまった!どうも団子に睡眠薬を入れられたらしい……

意識が戻ると、僕は表日本の笹島のガード下に横たわっていた。洋服はよれよれで財布はすっからかん。ちょうど居合わせた浮浪者が食い残しの海老フライを放ってよこし「早う帰らんと、塾帰りの餓鬼どもにいじめられるぞ」と教えてくれた。