ドイツ統一後のBX2OS
前述のプラクチカBX10,20,21の3機種は、プラクチカBシリーズとしては初のフルモデルチェンジであるが、コストダウンや生産性を追求する余り、プラスチック地肌のままの外装など、ドイツ製品や一眼レフカメラとしての高級感が希薄になってしまった。この反省をこめて、主に外観デザインを中心に改良されたのが、巻頭に記した、東西ドイツの統合、そしてペンタコンの倒産、シュナイダー・ドレスデン社の継承という混乱を経て、ようやく1992年夏に発売の運びとなったプラクチカBX20Sである。自由経済の激烈な競争に対処するためには、やはり中身ばかりでなく、外見の見栄えも必要なのだ。
運悪くペンタコン社の倒産と重なってしまったとはいえ、'90フォトキナにおけるプレゼンテーションには各国語別のスタッフを配し、今までにない意気込みであったと伝えられているように、カメラメーカーとしてのサバイバルを賭けたニューモデルだ。
日本総輸入発売元のエレフォトからは、プラクチカBX20S発売記念として、カールツァイス・イエナ製のプラクチカ−マクロ55mmF2.8付きが20台限定発売された(写真)。マクロならではの描写性能に優れたレンズである。
プラクチカBX20Sは、機能そのものはBX21と同一だが外装を一新し、裏蓋も含めて全面的にプラスチック化された。細部に曲面を生かした優美なスタイルになり、手によく馴染み、上品な黒艶消塗装が施されて高級感が大幅に増した。巻上レバーとシャッターダイヤルの形状が変更され、レリーズ時の感触やタイムラグも多少改善されるなど、使用感も良くなった。 マーキングや細部の仕上げについても、日本製カメラと変わらないほどに洗練されている。ストラップの装着は、アイレットではなく、前面に設けられたストラップ金具への直接取付けタイプになった。
フィルム感度はDXコード対応になり、IS0 25-5000を自動設定。DXコード以外のフィルムは、手動によりIS0 25-400を設定できる。このダイヤルは、露出補正兼用になっており、設定のクリックストップは倍数ステップごとになっている。
プラクチカBC-1以来、ホットシューのフラッシュ連動接点は、オリンパス OMと共通であり、フラッシュ関係が共用可能であったが、プラクチカBX20Sになって初めて取扱説明書のTTL自動調光フラッシュの対応についての解説に、ホットシューの連動接点がヨーロッパ統一規格であるメッツ社製のSCA321対応(オリンパスOMと同一)と明記されるようになった。これは、ドイツ統一のささやかな成果のひとつといえるだろう。

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