ユニークなシャッター
シャッターは、最高速度1/1000秒、フラッシュ同調1/125秒以下、電子制御式の先・後羽根各3枚の縦走行金属シャッターである。スペックは平凡だが、接眼窓内へシャッターの先羽根がせりあがるユニークなメカニズムになっている。シャッターを切ると先羽根が接眼窓内にせり上がり、露光後直ちに戻るクイックリターン式になっているのだ。
ファインダーの接眼窓のスペースをシャッター先羽根の作動スペースに利用することにより、ポデーの高さを抑えるとともに、露光中のアイピースシャッターを兼ねる一石二鳥のアイデアである。このため巻上げの前後ともフィルム面を覆っているのはシャッター先羽根で、後羽根は常時下部に収納されたままで巻上げ時にも目にすることはない。
シャッターボタンを軽く押すと、シャッター速度がファインダー視野の右辺にLEDにて表示される。電子シャッターの特徴を生かして、AE撮影時には最長40秒までの自動露光が可能になっている。マニュアル時は、B.1〜1/1000秒がシャッターダイヤルで設定できる。マニュアル時は設定速度がLEDの点滅、測光値が常時点灯する一種の追針式として使用できる。シャッターボタンの周囲には、ロックリングが設けられている。
電源は6ボルトのアルカリ乾電池PX28や4LR44等を使用し、エプロン底部に収納する。シャッターダイヤルの矢印マークはX接点用で、機械式制御の1/125秒。万一電池切れになった場合も使用できる。シンクロはX接点専用だが、フラッシュバルブ用として1/30秒が指定されておりシャッターダイヤルにシンボルマークが記されている。ホットシューとは別に、シンクロコード用のPCソケットもエプロン左に設けられている。

ミラー内プリズムTTL測光
TTLは、ボデー測光タイプ。ミラー中央部がハーフミラーになったミラーの裏面に薄い測光プリズムを内蔵した独自の方式で、ハーフミラー透過直後の光を左へ曲げ、側面のわずかな空間を経てミラーポックス左上奥に理込まれたSPC受光素子に光束を送る巧妙な仕組みになっている。同様なミラー内プリズムTTL測光システムは、すでに1973年登場のファインダー交換式のM42スクリューマウント機、プラクチカVLCから採用されており、プラクチカ独自の方式である。参考資料
受光角はファインダー中心部の円形マット部分とほぼ一致し、周囲光の影響を受けないセミスポット的な測光を可能としている。ボデー内測光のためファインダーからの逆入射光の影響は受けにくいが、ファインダーから眼を離すセルフタイマー撮影時等には、別添のアイピースカバーが用意されている。
ミラーは大型で、全体が後退しながら上昇する方式になっており、超望遠や接写でもファインダーのミラー切れ現象はほとんど生じない。しかし、測光プリズム内蔵のため質量が大きいことや、前述のクイックリターン式のシャッター機構とあいまって作動音とショックは過大で、プラクチカBシリーズの隘路となった。
ファインダーは、大型のペンタプリズムを使用し、視野率95%のハイアイポイントタイプで見やすい。視野右側にシャッター速度がLEDで表示され、レンズの絞り値も下部に直読式で表示される。ファインダースクリーンは、中央部にトリプルウエッジと呼ばれる平凸レンズを斜めに配した独特のもので、縦横どちらの線でもピント合わせができる。その周囲はマイクロプリズム、そしてマット面となっている。

【参考資料】プラクチカのTTL測光システムの経緯
プラクチカのTTL測光は大変凝っており、M42スクリューマウント(ネジ込み式レンズマウント)時代のプラクチカでは、3種類の測光方式があった。絞り込み測光では影響が大きいファインダー接眼窓からの逆入射光の影響を避けるためと思われる。
(1)コンデンサーレンズ内のビームスプリッターで光の一部をcds受光部へ送る。(PRAKTICA SUPER TL等)
(2)ペンタプリズム前面の測光用プリズムで水平に置かれたcds受光部へ送る。(PRAKTICA LTL,MTL 等)
(3)ミラー裏面に測光プリズムを配して、ミラーボックス横のcds受光部へ光を送る。(PRAKTICA VLC2 等 ファインダー交換式カメラ)この測光方式はPRAKTICA Bシリーズに継承。

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