■トプコンT (電話度数記録カメラ) TOPCON T
このカメラの用途について、本家トプコンのカスタマーズサービスより回答を頂戴しました。北米の代理店ベセラー社がベルテレホン社から受注した電話使用度数を記録するカメラとのこと。トプコンスーパーDをベースにした特注品です。この用途では、有名なポスト・ライカがありますが、トプコンも同じ用途のカメラが存在したわけで、しかもカメラとしての機能は上。トプコンファンとしては嬉しくなってしまいます。
基本ボデーは、トプコン・スーパーDである。しかし、ファインダーがない!!。金属板を折り曲げてカバーしてあるだけである。もちろん、ボデー内にはミラーも露出計もない。シャッターボタンは、金属板を加工したリンク機構を介して、カメラの後ろから押すようになっている。裏蓋の開放も、側面に設けた丸ボタンを上へスライドさせる方式に改造されている。
レンズは黒い円筒で覆われており、前面にはゼラチン製の偏光フィルターが装備されている。ネジ込み式になっている黒い円筒を外すと、超広角レンズRE Auto Topcor 25mmF3.5が装着されている。このレンズの特徴である専用の後部バヨネットフィルターは装着されていない。後部フィルターの厚み分だけピントの誤差が出るが、距離合わせ位置と、絞り込みによる被写界深度でカバーしているようだ。絞りはF22固定、ピント位置も約1.5メートル付近(注:後部フィルターがないので、距離目盛りと実際の合焦位置は異なる)に設定されており、フォーカスリングも容易に動かないほど固い状態になっている。
レンズは固定式が基本で、マウントのレンズ着脱レバーはマウント部から外へ出ない程度に短くされ、簡単には操作できないようになっている。
また、軍艦部横にあるフラッシュのPCソケットには、ストラップ吊り金具を利用してコネクタの押えレバーが設けられている。フラッシュケーブルが容易に外れないようにするためだろう。シャッター速度はX同調専用の約1/60秒の一速のみで、シャッターダイヤルの場所はメクラ蓋である。
25ミリ超広角レンズをF22まで絞り込んだ深い被写界深度、回転できない偏光フィルター、X同調速度専用の単速シャッター、フラッシュ接続の確実化…これらの仕様は、強力なフラッシュ(ストロボ)を使用し、近距離で広域の精密撮影のために目的を絞ったものである。電話使用度数カウンターに向けて、専用の架台に設置して撮影するため、ファインダーも不要なわけである。
当方がこのカメラを中古市場で目にしたのは、ここ10年ほどの間で3台目なので、さほど少数というわけでもないようだ。北米の中古ディーラーからは、サイエンスティック・トプコンという名前で売りに出されていたので、科学用途のカメラではと思っていたのだが、本当の用途は電話局の通話度数記録撮影カメラ。その正体は、ポスト・トプコンでした。(2001.4.6)
表紙 トプコンAM トプコンAMW トプコンMT−1 潜水艦用ファインダー トプコン135EE