■最後のトプコンは香港製?
35ミリレンズシャッター式プログラムEEである。このカメラについては、日本国内ではカメラファンの間でも、ほとんど知られていないのではないだろうか?長年のトプコンファンである筆者自身も、このカメラを見るまで、その存在を知らなかった。ボデーには"TOPCON 135EE" レンズには"TOPCOR 1:2.8 40mm"と表記されており、レンズキャップやソフトケースにも"TOPCON"のロゴが入っている。ボデー底部には" MADE IN HONG KONG"と小さくプリントされているので、明らかに香港でOEMされたカメラである。OEMといえば、同じデザインで名前だけが異なるカメラが存在することはよくあるのだが、本機の類似品に心当たりはない。香港でもマイナーな存在のカメラか、それとも独自設計によるものものだろうか。
思い返せば1985年頃のことである。トプコンブランドでおなじみの東京光学が、すでにカメラ部門から撤退していた時期だが、筆者の事務所のすぐ近所にあった東京光学名古屋営業所を、カメラの修理依頼で訪ねたとき、営業所長にカメラの話を聞く機会があった。「トプコンのカメラが無くなってしまって残念…」といった話のなかで、「当社も、最後の時期にはコンパクトカメラを香港で生産することを企画したことがあるのですよ。」といった返事が所長から返ってきたことを思い出した。詳しいことは聞けなかったが、実物は市販にまで至らず企画だけで終わってしまったのかと思っていた。しかし、実現していたのだ。このトプコン 135EEは、おそらく所長の話に出た、香港で製造されたコンパクトカメラなのである。
■ユニークなアイデアも
このトプコン 135EEは、35ミリレンズシャッター式プログラムEEで、ボデーは内外ともにプラスチック製である。レンズはTOPCOR 40mmF2.8。通常このスペックのレンズなら3群4枚のテッサータイプのはずだが、資料によると3枚玉とのこと。ピント合わせは4点ゾーンフォーカスで、レンズ鏡胴とファインダー視野下に4種の絵があり目測で距離を合わせる。
露出はプログラムEEのみである。自然光では露出アンダーになる暗い条件時には、ファインダー視野下に赤いランプが点灯して、フラッシュ撮影を促す。内蔵フラッシュ下の赤いボタンを押すと、発光部が横へ飛び出す。ファインダー上のスライドレバーでフラッシュのスイッチが入る。フラッシュのチャージ完了でファインダー接眼窓の横にランプが点灯する。飛び出したフラッシュ発光部を収めると、上にあるスライドレバーも元の位置に復帰する。
電源は、フラッシュ用に単三乾電池2本、EEコントロール用にLR44ボタン電池を1個使用する。
当方の機体は、シャッターが切れず、フラッシュもチャージできない状態だが、外観はきちんとしているので、なんとか修理して実写してみたいと思っている。■実体はOEMのトプコンカメラ
本家トプコンのカスタマーズサービスより、このカメラの由来について回答を頂戴しました。「トプコン135EEは正規の製品登録台帳にはありませんが、トプコンが関係していた形跡はあります。仕様は分かりません。販売上の政策から少数OEMされたようです。多分ブランドのみ異なる製品が他にもあると思います。」とのことです。 (2001.4.6)その後、同機種(完動・資料付き)を入手されたトプコンコレクターの吉田氏の情報によると、東京光学がカメラ生産から撤退後に、営業上の理由からOEM調達したカメラらしく、アメリカで低価格で販売され、まるで景品のような扱いだったらしい。(2002.8.14)