■最後のトプコン一眼レフはKマウント
トプコンRM300は、東京光学の一般向け35ミリカメラの歴史の最後期、1979年ころに輸出向けを中心に発売された。トプコンRE300と同じスペックのカメラで、レンズマウントが、従来のエキザクタを基本としたトプコンREバヨネットマウントから、大口径のトプコンAMマウントに改められている。トプコンAMマウントといってもオリジナル規格ではなく、旭光学が各社が自由に使えるユニバーサル規格として提唱したバヨネットマウントのペンタックスKマウントと同じである。ただし、Kマウント採用の経緯について旭光学からクレームがあったたような記事がカメラ雑誌に載ったことがある。東京光学がTTL開放測光の特許などで各社を縛っておきながら、特許等は存在しないオープン規格とはいえ、新たなマウントを拝借するという出来事に不快感があったのだろうか。
一眼レフの市場では、もはや伝統的なエキザクタよりも、ペンタックスKマウントのほうが圧倒的なシェアを占め、特に輸出向けではマウント改変のニーズが高かったのだろう。各社からのOEMに対応するためか、"TOPCON"のロゴや "RM300"は、ネームプレートのはめ込み式で、簡単に替えられるようになっている。
なお、トプコンRM300は輸出向けカメラのはずだが、日本国内でも東京方面などで一部市販されたらしく、当方は1985年ころに、ケース付き新同品を国内の個人売買で入手した。■AMズームトプコール28-50mmF3.5-4.5
標準レンズとして装備されているものは、単焦点のAMトプコール55mmF1.7が多い。これは REトプコール55mmF1.7とマウントが異なる以外は、まったく同一レンズである。興味深いのは、上記の写真の広角系ズームAMズームトプコール28-50mmF3.5-4.5である。当時28ミリ広角域からのズームは、一眼レフ各社とも多くはない。同クラスのズイコーズーム28〜48mmF4も愛用していたのだが、わずかの差ながら、長焦点側が長いのが嬉しかった。
ズーミングの焦点移動は、結構あったといおうか、ピントリングに遊びが多かった印象。ズーミングしてからピントを合わせ直す必要があった。設計はともかく、コスト面などから工作精度については、シビアに詰められていない雰囲気があった。MC表示があり、マルチコーティングのようだが、レンズ表面の反射色でそれらしいのは数面のみで、コストダウンに苦心した様子が感じられる。フィルター口径は55ミリと比較的コンパクトだ。
このレンズは、東京光学純正ではなく、他のレンズメーカー等からの安直なOEM調達ではという話しもある。しかし後期のNシリーズと呼ばれる普及型のREトプコール交換レンズ等も、設計は東京光学で、製造は外注とのことなので、同様な開発経緯ではと推測している。このAMトプコール28〜50mmF3.5-4.5の フォーカス部のラバーリングを外したら、 他のレンズと同様のTOPCONの丸い金色の検査シールが貼ってあった。 トプコンと関わりのあるレンズであることは確かなようだ。
描写は、トプコンのレンズとは信じられないほど固くてシャープ。まるでコピー機のズームレンズのようだ。そういえば東芝の複写機の光学系ユニットも東京光学製とか…。
グラデーション豊かなトーンの再現性は期待できず、操作の精密感も薄いので、何となく愛着が湧かなかった記憶がある。とはいえ、この焦点域は路上観察など被写体によっては使い勝手の 良いレンズだった。現在では、かなりレアなはず。処分してしまって後悔中…。 (2001.8.2)